人間のwell-beingは、WHO憲章で定義されるように、身体的・精神的・社会的に満たされた状態と言われますが、当社ビジョン「世界中に、こころ豊かな毎日を届ける。」やミッション「あたらしい医療体験を、デザインする。」を実現するためには、まずは当社の価値観を少しずつ言葉で表現することが必要だと考え、ブログを開始しました。当社スタッフによる投稿はもちろん、ゲストをお迎えし医療や経済、政治、文学、数学など、様々なテーマを取扱うことで、世界を知る、あるいは自分と向き合うきっかけをお届けし、読者の方に何か「気づき」を提供できれば幸いです。
ゲストによる投稿の第一回では、歴史研究家の李東潤さんをお迎えし「感謝」をテーマに寄稿いただきました。「巨人の肩に乗る」と言われるように、歴史を学ぶことで現在を理解し、未来を創造するためにどのようなスタンスに立つべきなのかが見えてくるような気がします。
謝という文字に弓を「射る」が入っている理由
感謝という言葉には「謝」という文字、漢字が使われています。また、この漢字は「ありがとう」を伝える言葉だけでなく、謝罪や陳謝という「ごめんなさい」を伝える言葉にも使われています。なぜ、「謝」という漢字はポジティブな意味にもネガティブな意味にも用いられているのでしょうか。 まず漢字としての「謝」の構成をみてみると、「言」と「射」の二つで成り立っていることが分かります。
「言」については、感謝や謝罪といった言葉に関連するものなので違和感はないと思いますが、なぜ「射」の字が入っているのかはイマイチ分かりにくいと思います。もともと漢字が作られた古代中国において、弓を射る行為には、邪気を払う意味合いがありました。そのため重要な儀式やあるいは重要な誓約を行う際には、弓の弦を打ち鳴らした上で執り行っていたのです。ここから重要な言葉、あるいは特別な言葉という意味が「謝」という文字に含まれるようになりました。
感謝にしても謝罪にしても、どちらも、「自分の気持ちを言葉にして素直に(邪心なく)伝えたい」ということが一緒なのです。そう、相手に伝えたい言葉の熱量というか絶対量が大きいという共通点があるのです。自分の気持ちを最大限にして伝える文字として「謝」という文字が採用されたといえます。ポジティブな「ありがとう」と、ネガティブな「ごめんなさい」に共通の漢字が使われているのかが不思議でしたが、「謝」という漢字の成り立ち、意味を理解すると疑問は氷解しますね。さらに「謝」の字には、矢が流れていく様から、さようならの意味を含んだ「謝恩」から、はたまた「代謝(移り変わること)」という意味まで備えて、現代日本語において使われているのです。
「感」という字を加えることで・・・
感謝という言葉には「謝」に加えて「感」という漢字が使われています。これは「第六感」や「感動」にも使われている文字です。この「感」という字は、「口+戈(武の一部、ほこ)+心」で構成されています。「口」は単なる人間の口ではなく、神さまへの祝詞を入れる箱だと解釈されます。この神さまへの祝詞を入れた箱を奪われないように「戈(ほこ)」を持って、しっかりと守っておく。そうすると夜中に神さまが、こっそりとやってきて、祝詞に示された気持ちに応えてくれると考えられました。「感」という漢字に含まれている心は、「神さまの心」だったのです。その神さまの心が動くことが、「感」の原義に秘められているのです。ここから、「すべて(自分も含めて)の心が動く」ことが、「感」の字の意味に含まれていき、「とても感動したよ」という自分の気持ちを表現する文字になっていきました。
纏めると「感謝」とは、「すべて(自分と相手、はたまた周囲も含めて)の心に、素直に自分の気持ちを届ける」という意味になるのです。
「感謝」を伝えること
漢字の成り立ちを知ることによって、これまでただ単に「ありがとう」を伝える言葉とみえていた「感謝」の言葉のもっと深い意味や情景が見えてきました。しかし、感謝の成り立ちまで遡ると、そんな簡単に「感謝なんてできないよ!」と思われたかもしれません。「感謝を大事にしよう。」「ありがとうと伝えよう」と日頃言われることも多く、その重要性に異論がある方はいないでしょう。便利なコミュニケーションツールが溢れている現代において、表現方法は多様化しています。直接会って話をすることだけでなく、電話やメッセージなどの音声で伝えることもあれば、テキストやスタンプなどで伝えることもあるでしょう。
感謝を伝えるにあたっては、どんな方法・手段でも構いません。何気ない一言が相手の胸に響くこともあれば、言葉以外の感謝の気持ちが相手に届くこともあります。まずは自分の気持ちに素直になって、相手に届けようと思うこと。そこから全ての「感謝の気持ち」の表現が始まると思います。アナタの大切な人に感謝の気持ちが届きますように。